短編小説

5分くらいで読めます なさそうでありそうな話

二丁目のにゃんこ

二丁目のにゃんこが、にゃおんと鳴いた。 うちを出て、公園に向かう途中の八百屋の前に、招き猫みたいにちょこんと座っている。ビー玉みたいな瞳の、首輪のない細っこい大人の黒ねこだ。二丁目に住んでいるみんなが、このにゃんこを知っている。 二丁目のに…

クロゼット

ぎょっとした。 うちの庭木に、男の子がよじ登っているのだ。 「あぶないわよ」 慌ててサンダルをつっかけて外に出ると、枝にしがみついたままこちらを振り向いた。夏が明けてすぐにしては色白で、どきっとするほどきれいであどけない顔をしている。羽織って…